VitaminD

 ビタミンDはカルシウムの吸収促進、骨の成長促進、血中カルシウム濃度を調節するビタミンとして知られてきました。ビタミンDが欠乏すると、カルシウム不足により成人では骨軟化症を起こし骨折の原因となることも有名です。

最近の研究により、自然免疫と獲得免疫の両方に影響を与え免疫細胞の機能を最適化する働き、筋タンパク質合成促進精神を安定させる脳内セロトニン合成作用など各種多様な作用も認められるようになっています。また耐糖能障害糖尿病発症率が上昇するとの疫学調査もあり,ビタミンD欠乏症を呈するティーンエイジャーでは血糖値上昇リスクが2.5倍,メタボリック症候群リスクが4.0倍増加すると報告されています.このようなことからビタミンDの欠乏は、2型糖尿病や心血管疾患,高血圧,発癌,自己免疫疾患(多発性硬化症)、うつ病、サルコペニアなどの発症リスクを上昇させる事が報告されています。

 他にもビタミンD濃度が低い妊婦では妊娠糖尿病や妊娠高血圧腎症の発症リスクが高く、小さい赤ちゃんを産む可能性も高く、細菌性膣炎のリスクの上昇もわかっています。

 かたや、小児においては、頭蓋骨を指で押しただけで凹むほど柔らかい、乳歯の生えるのが遅い、虫歯になりやすい、下肢が曲がる(O脚やX脚)、身長が伸びない、転びやすいなどの、骨基質が少なく弱い骨の「くる病を起こすことが知られてきました。 くる病を発病する患児はまれですが、ビタミンD欠乏状態の乳児が増加しており,0~5か月の乳児の52%がビタミンD欠乏という報告もあります.

 ビタミンDは,口からの摂取と紫外線の作用により皮膚で生合成されることで供給されます.乳児のビタミンDの状態に影響を与える大きな要因は母乳です。

 日本人の8割でビタミンDは不足しており、4割において欠乏していると言われています。したがって妊娠中、授乳中の母親はもちろん、乳幼児にも、ビタミンD低下への配慮が大切です。適度の外気浴・外遊びなどの生活習慣指導,および補完食(離乳食)でサケ、サバ、イワシなどの魚や卵黄などの積極的摂取を含む食事栄養指導により,ビタミンD欠乏は予防可能です.

 ビタミンDサプリメント過剰摂取による健康被害も知られていないわけではありませんが、上限を超える(9歳以上で>100μg/日)サプリの_長期間摂取によるもので、実際は稀です。たとえば1-2歳においては通常投与量は3.5μg/日(12歳以上で9μg/日)ですが、耐用上限(許容量)が25μg/日なので2粒で3.6μgを含む肝油の場合には13粒/日(2粒で10μgの場合は5粒)になりますので、管理された通常投与量でのリスクはないと考えられます。ただし、サプリなどは幼児が手の届かないところで保管しましょう。